公営競技のデータは、どこまで公開されているのか
「AIで予想を作りたい」と考えたとき、最初にぶつかる壁はアルゴリズムではありません。そもそも学習させるデータが手に入るのかという、ずっと手前の問題です。そしてこれは競技ごとに事情がまったく違います。
分析の前に決まってしまうこと
機械学習の性能は、モデルの新しさよりもデータの量・粒度・遡れる年数で決まります。10年ぶんの詳細データがある競技と、当日の出走表しか取れない競技では、同じ手法を使っても到達点がまるで違う。つまりデータの入手性が、その競技で何が作れるかをほぼ決めてしまいます。
競技ごとの状況
競馬 — 分析用データの提供が確立している
中央競馬は、分析・ソフト開発を前提としたデータ提供サービスが整備されており、過去のレース結果や出走馬情報を体系的に取得できます。個人が自作ソフトや独自指数を作る文化が長く、その利用範囲についてもガイドラインが示されています。データ分析を始めるハードルは、公営競技の中でもっとも低いといえます。
競艇 — 公式が過去データを配布している
ボートレースは、公式サイトのダウンロードページで競走成績・番組表・レーサー期別成績のファイルが提供されています。2002年ごろまで遡れるため、長期の傾向分析が可能です。
競艇はコース(進入した位置)の有利不利がはっきりしており、モーターの調子という機械要因も絡みます。これらは数値化しやすく、機械学習との相性が良い競技です。データが公式配布されている点と合わせて、分析対象としての条件は恵まれています。
競輪 — 一括で入手できる公式データがない
競輪は、公式サイトでレース結果や出走表を閲覧できるものの、分析用にまとめて配布されるデータファイルが用意されていません。過去成績を体系的に集めようとすると、各所の情報を個別に参照していく必要があり、他競技に比べて明らかに手間がかかります。
競技としてはライン(選手同士の連携)という独特の構造があり、分析対象としては非常に面白い題材です。しかしデータの入手性という一点で、参入のハードルが高いのが実情です。
「取れる」と「使ってよい」は別の話
ここが最も見落とされやすい点です。技術的に取得できることと、そのデータを自分のサービスに使ってよいことは、まったく別の問題です。
- 着順・払戻などの事実 — 事実そのものに著作権は生じないとされます
- 各サイトが作った制作物 — 独自予想、解説、編集されたデータベース、記事や画像などは著作物として保護されます
- 各サイトの利用規約 — 著作権とは別に、サイトごとの規約で自動取得や営利利用が制限されている場合があります
特に民間の投票サイトは、利用規約で営利目的の利用や自動取得を禁じていることが一般的です。公式サイトであっても、掲載コンテンツの転載を禁止していたり、収益を伴う利用を断っている場合があります。データを扱う前に、取得元の利用規約に必ず目を通してください。
これから始める人へ
もし今から公営競技のデータ分析を始めるなら、次の順序をおすすめします。
- 取得元の利用規約を読む — 何より先に。ここで方針が決まります
- 公式配布データが存在する競技から着手する — 競馬・競艇は条件が整っています
- まず「答え合わせ」から作る — 予測より先に、過去データで検証する仕組みを用意する
- 結果を長期で記録する — 短期の結果は実力を教えてくれないため、記録の蓄積が唯一の判断材料になります
まとめ
- データの入手性が、その競技で作れるものをほぼ決める
- 競馬は分析用データ提供が確立、競艇は公式が過去データを配布
- 競輪は一括入手できる公式データがなく、ハードルが高い
- 「取得できる」と「使ってよい」は別問題。規約の確認は必須